まもなく2学期が始まります。
子どもたちは期待と不安と両方を持ち合わせて過ごしています。
どのようなクラスになるのか、友だちはいるだろうか、担任の先生は誰なのだろうか。
小さな体で持てる限りの期待を持ち、持てる限りの不安と戦っているのが子どもです。
「子どもなんだから」と思っていると意外な落とし穴にはまってしまいます。
そのような子どもの期待に応え、不安を解消できるように担任の先生は立ち向かう必要があります。
学級がはじまったときにどのようなクラスを目指すのがいいのかということに視点を当てて一緒に考えたいと思います。
1 子どもと先生の意見交換
なんといってもクラスはまとまりがあるクラスがいいと思います。
「子どもたちの気持ちがバラバラで、みんなで目標達成なんて考えられない」
というクラスを望む先生も子どもも、それは稀なケースで、いくら子どもでもクラスに充実を求めるはずです。
よくプロスポーツのチームでは、「Our Team」と言われますが、クラスも同じようにしていくと1年が充実したものになります。
でも、先生の思いだけではそのようなクラスにはならないのが現実です。
子どもは子どもで、今までの環境も考えもあるので、そう簡単に切り替えができるわけではありません。
だからたくさん考えさせて「このクラスは自分たちでまとまりのある良いクラスにしていく」という意識をもたせなければいけません。
一言で良いクラスと言ってもその定義が難しいので「漠然と〇〇なクラス」と子どもたちに意見を出させるのがいいと思います。
子どもたちが目指すものと先生が目指すものが、そのときにたまたま合致していれば考えのすり合わせをしなくてすみます。
もしも違っていたら、押し付けではなく自然な形ですり合わせていくことが良いでしょう。
その意見の確認作業をしないで、先生の意見だけを通してしまうと、子どもたちにとっては「押し付けられた」「自分のクラスではなく先生のクラス」という気持ちになってしまうでしょう。
この意見交換を早い段階でしてみてください。
2 子どもたちの心を育てる
サッカー元日本代表の岡田監督は日本代表チームに対して「Our Team」の考えを説明するときにこのような話をしました。
「村の夏祭り」
ある村で、毎年、夏にお祭りをやっていました。祭りの始まりは、一斗樽をぶち抜いてみんなで乾杯します。ところがある年のこと、飢饉がやってきてお祭りどころではなくなってしまいました。こんな時こそお祭りをやって、気持ちを明るくしたいと思いましたが、いかんせん景気づけの一斗樽がありません。
みんなが思案投げ首をしているところに、村の知恵者がこう言いました。みんなの家には、コップ1杯ぐらいの酒はまだあるだろう。それを持ち寄って、去年使った一斗樽に入れて蓋をし直そうぜ。それをぶち抜いて乾杯すれば、祭りを始められるじゃないか、と。
この知恵者の提案にみんな賛同して家に帰り、各々コップ1杯の酒を持ち寄りました。一斗樽がいっぱいになったところで蓋をして、気合を入れてぶち抜きました。めいめいにコップに酒をつぎ、乾杯の音頭とともにぐいと飲んだその瞬間。どの人も怪訝な顔をしてたというのです。さて、何が起こったのでしょうか。出典:楽しい体育の授業
もしも、この問いかけをクラスの子どもたちにするとどのような答えが返ってきそうですか?
「まずいお酒」とか「腐っていた」とか、なんなら「毒入り」とか言いそうでしょうか。
どれも正解ではないのです。
答えは「水だったです」
つまりはどういうことか・・・。
村人の誰もが「俺一人ぐらい水を持っていってもわかりはしない」と考えたのです。
「自分一人くらいいいだろう」
この考え方が組織を壊します。
クラスを良くするのも悪くするのも結局は自分たちということを理解させてあげましょう。
先生がいくらクラスを良くしたいと言っても、それに対して子どもたちが上辺だけ賛同したとしても、文章のような村になってしまえば結果は見えています。
このクラスを良くしたいのは誰なのか、誰のために良くするのかをよく考えて、決められた最低限のことは守るという意識を持たせることがとても必要なことなのです。
子どもたちには個性と出すことと、自分勝手は違うということをよく理解させなければいけません。
「自分一人くらいいいだろう」
と自分が思っている時には、みんなが思っているということを話しましょう。
ただ、子どもたちには個性を殺して組織に所属しなさいということではないことも話さなければいけません。
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3 個性と組織
組織の中で個性を出すことはいけないことではありません。
むしろ、組織の中で個性存分に出さなければいけないと思っています。
個の集合体が組織に変わるからです。
体育が得意な子、算数が得意な子、国語が得意な子・・・。
整理整頓が得意な子、人を引っ張るのが得意な子、声が大きい子・・・
さまざまな個があって、一つのクラス(組織)になっています。
学校なので、体育が得意だけど国語が苦手という子には国語もできるようにしてあげなければいけません。
でも大人になって仕事を始めた時、学校の先生が自動車の部品を作れる必要はないです。
できたら素晴らしいことです。
しかし、できなくても自分の得意に自信が持てれば仕事としては成り立ちます。
今、世界では終身雇用の時代ではありません。
アメリカの生涯転職回数は平均11回だそうです。
日本にいると終身雇用が当たり前だと育てられるので、一つの会社に入ったら定年までその会社で働くということも当たり前だと思っています。
ですが、時代は流れ、一つの会社に定年までいるというのは時代遅れとなってきています。
それは日本でもそうです。
国語だけが得意とか、体育だけが得意という子を育てるわけにはいきませんが、大人になったときに営業のプロフェッショナルだけど、プログラミングはできませんというのはよくある話だと思いませんか?
なにかプロフェッショナルになるものを見つけて育ててあげることも大切で、その考え方を子どもたちに植え付けることも大切です。
「あなたはこれが得意だけどこれが苦手だから苦手をもっと頑張りなさい!」
「あなたはこれが得意だから、これを人よりももっととびぬけて上手になれるよ!」
クラスにいる子ども全員に、なんでもかんでも平均的にできるようにしてあげるのではなく、それぞれの個性を出していいという雰囲気をだして、それぞれを伸ばしてあげることが、クラスの所属感に繋がります。
個性が強いクラスは決して悪いことではありません。
その個性をどれだけ上手に輝かせてあげられるか、それが大切なのだと思います。
4 まとめ
まもなく新学期です。
クラスの子どもたちにはどのようなクラスにしたいのかを自分たちで考えさせることが大切です。
誰かに言われて作ったクラスではなく、子どもたちが作るクラスにしましょう。
そのとき「自分一人くらいいいだろう」はクラスを壊します。
個性は出してもいいけれど、自分勝手はいけないということを徹底しましょう。
そして自分の得意を伸ばしていいという雰囲気にします。
「みんなを引っ張るプロフェッショナル」
「大きな声で発言できるプロフェッショナル」
「掃除のプロフェッショナル」
いろいろなプロフェッショナルをクラスで作ってあげましょう。
これから1か月がクラスを1年間作っていく上で子どもたちにも先生にも重要な時期です。
ここで上記のようなことを意識して楽しいクラスをみんなで作っていってほしいと願っています。
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