文部科学省が出している学習指導要領。
その中にはAからGまでの領域で分かれています。
AからGまでの領域で個人技能を身に付けるものと集団技能を身に付けるものとがあって「E ボール運動」というのが集団技能を身に付ける一番大きな領域の一つです。
今回は今まであまり触れてこなかった集団技能に焦点をあてて「E ボール運動」を使って解説したいと思います。
その中でも「ゴール型」にピックアップしていきます。
今までの体育個人技能をまとめたブログは
をご覧ください。
今回の「ゴール型」を最後まで読んでいただくと、体育の授業ってよくわからないなぁと思う先生が「ゴール型」の授業の組み立て方や指導すべきポイントがわかるかもしれません。
そして「ゴール型ってそんなに簡単に考えていいんだ?!」と感じていただけると思います。
1 ゴール型ってなに?
そもそも「ゴール型」とはなんでしょうか?
「E ボール運動」の中には「ゴール型」「ネット型」「ベースボール型」の3つで構成されています。
AからGの領域の中で集団について取り扱うものは他にもありますが、集団対集団だけで構成できるのはこの領域くらいです。
他には「C 陸上運動」でリレーなどで集団対集団をすることはあっても、陸上そのものは個人技能なので、個人の学習の中に集団の学習が含まれているといった感じです。
さて、「ゴール型」「ネット型」「ベースボール型」と聞いてもいまいちピンとこない方もいるでしょう。
「体育の授業は、バスケットボールを教えたり、サッカーを教えたり、ソフトボールを教えたりするんでしょ?!ゴール型とか関係ないじゃん!」
と思う方もいると思います。
実は体育の授業では「バスケットボール」「ソフトバレーボール」「ソフトボール」などの種目を教えるというものはないのです。
「???」
ですよね。
体育の授業では「バスケットボール」「ソフトバレーボール」「ソフトボール」などの種目を通じて、「ゴール型」「ネット型」「ベースボール型」を指導するのです。
身に付けさせた知識及び技能として学習指導要領には
(1)次の運動の楽しさや喜びを味わい、その行い方を理解するとともに、その技能を身に付け、簡易化されたゲームをすること。
ア ゴール型では、ボール操作とボールを持たないときの動きによって簡易化されたゲームをすること。
イ ネット型では、個人やチームによる攻撃と守備によって、簡易化されたゲームをすること。
ウ ベールボール型では、ボールを打つ攻撃と隊形をとった守備によって、簡易化されたゲームをすること。
小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編
第5学年及び第6学年の内容p140~
つまり文部科学省が言いたいのは「バスケットボールを教えましょう」というものではないということです。
バスケットボールという種目を利用して
・ボールを持たないときの動き
・簡易化されたゲーム
を学ぶのです。
だから、ゴール型を学ぶので、選ぶ先生によってはバスケットボールではなく、タグラグビーかもしれないし、サッカーかもしれないということです。
2 ゴール型?バスケットボール?サッカー?
「バスケットボールでもタグラグビーでもサッカーでもいいって言ってもそれぞれ種目が違うし特性がちがうじゃん!」
と思うかもしれません。
確かにその通りです。
バスケットボールはバリバリに手でボールを扱うし、サッカーはバリバリに足でボールを扱う。
そしてバスケットボールは足でボールを扱えば反則だし、サッカーは手でボールを扱えば反則。
「こんなにチグハクなのに授業が成り立つの??」
と疑問に思うかもしれません。
先にも説明したように、手でボールを扱うことや足でボールを扱うことは「ボール操作」という部分に含まれてきます。
だからほとんどの学校が年間を通して、手でボールを扱う種目と足でボールを扱う種目の両方に取り組んでいるはずです。
そして、文部科学省が何よりも身に付けさせたい技能は「ボールを持たないときの動き」なのだと思います。
なぜかというと、どの種目でも共通して必要だからです。
バスケットボールの競技で言えば、得点を決めまくるスコアラーは大変評価されます。
シュートが上手でドリブル突破が上手、そういう選手は誰もが欲しがるプレイヤーです。
しかし、体育授業ではそういう子は評価されにくいのです。
学習指導要領でも書いてあるように「ボールを持たないときの動き」とあるので、シュートを決めることよりも、ドリブル突破することよりも、ボールを持たないときの動きができている子が評価されるのです。
しかし、先生によってはドリブル突破が得意でシュートを決めまくるバスケットボール経験者を評価したくなります。
「あの子、個人プレーで誰にもパスを出さないけどシュートもドリブルも上手いからA評価になるよねぇ」
なんてセリフが聞こえてきます。
これだと体育嫌いな子どもを生み出してしまいます。
「結局、バスケが上手な子が偉いんだね、はいはい、わかりましたよ」
となってしまうのです。
だから先生が見るべきポイントは
「ボールを持たないときにボールがもらいやすい場所に移動している子」
「ボールがもらいやすい場所に移動した子にパスが出せる子」
となり、そういう子が評価されるべきなのです。
ただ、注意してもらいたいのは「ボールをもらいやすい場所に移動すればどこでもいいってもんじゃない」ということです。
ゴール型は、最終的にはゴールを目的としています。
だから「ゴールに結びつくためのボールをもらいやすい場所に移動する」が大切な考え方です。
バスケット経験者は、先生からその情報を聞かされていません。
だから当然ながら「得点をすれば良い」と思い込んでいます。
でも「パス」を頭に入れておくだけで、上手なパスに徹してくれます。
結局、バスケット経験者だって知っていればワンマンプレーになんて走らないのです。
バスケット経験者にワンマンプレーをさせてしまう先生は要注意です。
3 ゴール型とは
「結局のところゴール型ってなんなんだよ!」
ですよね。
ゴール型は究極、バスケットボールをしなくてもサッカーをしなくてもいいんです。
でも、先生たちは新しい種目を考えるのが困難だからゴール型にバスケットボールやサッカーという種目を使って指導しているのです。
先にも説明したように、バスケットボールやサッカーは経験者がものをいうスポーツです。
だから、柔軟にルールを変えていく必要があるのです。
・ドリブルなし
・トラベリングという反則5歩から(本当は3歩から)
・リングにボールが当たっただけで得点
などなどです。
バスケットボールでドリブルなしってどういうことだ?!と思うかもしれませんが、何度も言うように文部科学省はバスケットボールを指導するのではなく、ゴール型を指導しようと言っています。
その中で覚えるべきはバスケットボールの技能やルール、戦略ではなく・・・そうです、
「ゴール型では、ボール操作とボールを持たないときの動きによって簡易化されたゲームをすること」
なんです。
だから、このことさえ押さえていれば、バスケットボールに似ているけど違う種目でも全然いいわけです。
子どもたちは、できないことには興味を示さなくなります。
だから、難しいことがあると極端を言えば投げ出します。
だってリングにボールが通ろうが通らなかろうが関係ないからです。
でも「リングに当てれば得点」となれば、多少ルールが緩和してやる気を出します。
5歩までだったら歩いてもいいとなれば考えて動き出します。
自分たちが覚えるべきはシュートのスキルやドリブルのスキルではなくて「得点しやすい空いている場所に移動すること」「移動した子にパスを出すこと」が重点目標ならできる気がします。
たった6~8時間で覚えるべきは、このことだということを指導する先生は知っていないと子どもたちの体育嫌いは拍車をかけてしまいます。
4 まとめ
今までは個人種目ばかりに焦点を当ててきたのですが、今回は集団種目にも焦点を当ててみました。
その中でも「E ボール運動」のゴール型です。
ゴール型に指導教材としては、バスケットボールやサッカーやタグラグビーがあげられます。
これらを使って指導すべきはそれぞれの種目のシュート力やドリブル力などではなく
「ボール操作とボールを持たないときの動きによって簡易化されたゲームをすること」
なのです。
シュートが上手な子を育てようとしてしまうと、経験者が評価され、そうでない子は評価されなくなり、体育嫌いを生み出します。
そしてゴール型を教えるので、究極はバスケットボール、サッカー、タグラグビーに似ている程度でも大丈夫なのです。
ルールを柔軟に変更して、子どもたちが楽しみながら技能を身に付けられるようにしてあげましょう。
ルールの柔軟な変更が子どもたちの学びに繋がります。
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