【体つくり運動】体育授業には共通する型がある!小さな力で大きな力を生み出す型を習得しよう!その2

体育

以前、体育に通じる「型」について解説しました。

前回は「腰を立てる」「つま先と膝を外に向ける」についてでした。
この型を習得すると、走る動きにかなり活用できることがわかりました。
今回も「型シリーズ」でお話させていただこうと思います。
体育の授業でも日常生活でも活用できる内容になっていますので、子どもたちの動きの習得の参考にしていただければと思います。


1 脇をしめると腕に力が入る

今回最初の「型」は脇をしめることです。
まず、簡単な実験をしてみましょう。

2人1組になって向かい合って立ち、両肘を伸ばし、手と手を合わせて押しあってみましょう。
そのときに手の向きを変えてみます。
片方の人は手の向きを「八の字」に、もう片方の人は「逆八の字」にして押しあってみます。
手の向きを後退して何度か試してみましょう。
「逆八の字」で押した方が楽に押せると思います。
よほどの筋力や体重差がない限り「八の字」にした人が押す事はできません。

このときの手の向きと肘の関係を確認してみてください。
手の向きが「八の字型」では、肘が横を向いています。
脇をしめることの本当の意味は、手の向きが「逆八の字」の場合のように肘が下を向くことをいいます。
決して、上腕が動体に密着することではありません。
さて、この脇をしめる(肘が下を向く)ことは人によって得意不得意があります。
実は、もともと脇がしまっている人と、そうでない人がいます。
立ったままでも座ったままでもかまいませんので、その場で「前にならえ」をしてみてください。
手のひらが向いあうようにして両手をまっすぐ前方に水平に上げます。
そのときの肘の向きを確認してください。
肘が下を向いて脇がしまっている人もいれば、肘が外を向いて脇がしまっていない人もいます。
脇がしまっていないという人は、棒を用意してみてください。
その棒を両手で手の甲が上を向くように握ってください。
肘を伸ばします。
その状態で肘が下をむくようにストレッチしてください。
繰り返すと自然にできるようになります。

2 肩を適正な位置に保つ

脇をしめることについて話しましたが、脇をしめるためにはもう一つ大切な型を習得する必要があります。
それが肩を適正な位置に保つということです。
「肩を適正な位置?」
と思いますね。
まず、肩と腕について、その構造を整理しておきましょう。
多くの人は腕は肩から動くと感じています。
ですが、実は鎖骨と胸骨をつなぐ関節、胸鎖関節が腕の動きの起点となっています。
肩関節のある肩甲骨はろっ骨の上をすべるように動きます。
つまり、肩はろっ骨の上でとても不安定な状態にあるのです。
そのため、適正な位置に肩を収めることが難しいのです。
日ごろの姿勢で肩甲骨の位置を意識する人はほとんどいません。
楽に立って、まっすぐに両腕を垂直に上げます。
手のひらを前に向けて、真横に両手を広げながら下ろして体側につけてください。
その位置がほぼ肩甲骨の適正位置です。
それよりも肩甲骨が前に位置する場合を「前肩」といい、後ろに位置する場合は「後肩」といいます。
現代人は日常生活や労働形態からほとんどの方が「前肩」になっています。
日ごろから肩を少し引き気味にして適正位置を心がけましょう。

3 スポーツから見る「脇をしめる」と「肩の適正位置」

今回も「型」はわかったけれど、いったい何に使うのか?というご意見をいただきそうなので書かせていただきます。
今回の「脇をしめる」と「肩の適正位置」は投げる動作に活用できます。
投げると言えば、学校体育ではドッジボールやベースボール型、ゴール型でも使うし、新体力テストのソフトボール投げでも使います。
走る動作の次に使うと言っても過言ではないくらい必要な能力です。
まず、投げる動作から考えてみましょう。
ドッジボールのような大きいボールやソフトボールのように比較的小さいボールを投げる場合がありますが、ボールの大きさに関係なく守らせたい型があります。
それはやはり「脇をしめる」ことです。
脇をしめることによって効果的にボールを前方に押し出すことができます。
ボールを投げるときに脇をしめるにはどのようにすればよいのでしょうか。
それはボールを投げる直前に肘ができるだけ投げる方向に向くようにすることです。
脇が開いている場合は投げる方向に肘が向いていませんが、脇がしまる場合はほぼ投げる方向に肘が向いています。
プロ野球のピッチャーもよく見てみると、投げる方向に肘が向いています。
脇がしまる度合いは幼児や児童によってかなり差がありますので、ボールを投げる方向に完全に肘を向かせる必要なありません。
ボールが進む方向に肘が向くイメージをもたせてください。
さて、ボールを投げる方向に肘を向けるイメージはラケットなどを振る場合も同じです。
ラケットでボールなどを打つ場合も脇がしまることが大切です。
では次はキャッチです。
ドッジボールなどでボールをキャッチする場合はどのように教えたらよいでしょうか。
これも投げる場合と同様に脇がしまることが大切です。
投げるときには肘が前方へ向くことが大切でしたが、ドッジボールなどをとるときに脇をしめるためには肘が下を向くことが大切です。
投げたり捕ったりするのが得意な子は、これらを考えずに当たり前に出来ているだけです。
繰り返し練習をすればできますのでやってみてください。

4 まとめ

今回は小学生に教えておきたい体を動かすための「型」について考えてみました。
そのシリーズ第2弾です。
日本ではいにしえから教えられてきた型が実はスポーツには適していなかったのです。
① 脇をしめる
② 肩の適正位置
これらを意識することで、投げる動作や捕る動作を習得できるかもしれません。
最初は窮屈な型ですが、やっていくうちに自然とできるようになるかもしれません。
よく「型破り」と聞きますが、まずはこの基本の型を身につけた上で型破りをすることをおすすめします。
型を身につけていないのに型は破れません。
そんな型破りを実現したのは桃太郎です。
本来はお母さんから生まれてくるはずなのに、桃から生まれるなんて・・・型破り過ぎます。
そして鬼退治に行くと言い始め、刀と日本一ののぼり旗と、本来ならお弁当なのにきびだんご・・・型破り過ぎます。
仲間と言えば、屈強な戦士、武闘家、魔法使い、僧侶がオーソドックスですが、犬、猿、雉・・・型破り過ぎます。
そして日本では古くから犬猿の仲と言われるほど犬と猿は中が悪いのに、敢えて仲間にする・・・型破り過ぎます。
こんなに壮大な話なのに、鬼とのバトルシーンは若干あやふやで「鬼をやっつけましたとさ」程度・・・型破り過ぎます。
ただ、桃太郎もこの型破りの前には型をしっかり身につけています。
お母さんから生まれてくるときのために脇をしめて頭を下にして生まれる練習は万全でした。
お弁当は脇をしめてお箸を持ち、肩を適正な位置にして食べる練習も万全でした。
人間の仲間に声をかけるために「日本語」をしっかり学びました。
犬と猿の仲裁ができるように「まぁまぁ」と言うときには、脇がしまっていました。
これら型があるからこその型破りだけは忘れてはいけません。


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