体育の技能を身につけようシリーズです。
今回は「ハードル走」です。
陸上競技としてハードル走を極めるのではなく、体育の授業としてのハードル走の考え方や授業の組み立て方について解説したいと思います。
最後まで読んでいただければ、スムーズにハードルを跳んで50m走とのタイム差が少なくなるかもしれません。
1 ハードル走の特性
ハードル走は最高スピードの技能を追求するものです。
50m走や100m走などの短距離走と同じです。
そんなハードル走の短距離走との異なる点は一定距離内にいくつかの障害物(ハードル)があり、それを越しながら走らなければならないという点です。
ハードル走は障害をリズミカルに連続的に跳び越えるところにおもしろさがあります。
体育でハードル走を行う上で、ハードルを上手に跳び越すことも大切ですが、スタートからゴールまでを一連の流れとして捉えるようにすることが大切です。
児童一人一人が目標を作るならば、個人の50m走とのタイムと比較するのも一つの方法だと思います。
ですが、タイムだけにとらわれてしまうと、本来身につけなければならないハードル走の技能を身につけられなくなってしまうので気をつけなければいけません。
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2 ハードル走の分解的指導
体育の技能は分解的に捉えることがとても重要であるということを今までのブログでもお伝えしてきました。
跳び箱であれば「①助走、②踏み切り、③着手 ④着地」の4つに分けられます。
これら4つで自分が劣っているところを身に付けて1つのものに仕上げて行くことが技能を身に付けるためには重要です。
ではハードル走では、どのように分解したらいいのでしょうか。
① スタート
短距離走なので、スタートの技能は必要です。
しかし、競技ではなく体育ですのでスターティングブロックを使ったり、フライングにならないようにしたりということではありません。
スタートから第1ハードルまでに上体を起こすことを意識させるのでいいと思います。
学校体育でのハードル走においては、スタートはそこまで身につけさせたい技能というわけではありません。
② インターバル
インターバルというのはハードルとハードルの間の距離のことです。
このインターバルをリズミカルに走ることがハードル走のスピードを上げる要素の最重要課題とも言えます。
インターバルの距離は、小学生だと5.5m、6m、6.5m、7mくらいが良いでしょう。
ただ、競技としてやるハードル走ではないので、体育の授業でインターバル7mは少し長いかもしれません。
インターバルの一番理想的な歩数は3歩ですが、小学生ですと5歩くらいになってしまう場合があります。
7歩になると多いと思います。
3歩を目指すのでインターバル7mというのは小柄な小学生には少し長いという印象です。
「あれ?3歩、5歩、7歩って聞いたことあるぞ?」
と思う方もいるかもしれません。
そうです、体育ではたびたび出てくるリズミカルなステップはなぜか奇数の3、5、7歩なのです。
走り高跳びのときもそうでした。
インターバルをこの歩数で走ることがスムーズにハードルを走り抜けるコツともいえます。
ここで勘違いが起こります。
ちょっと考えてみてください。
3歩でインターバルをするとして考えてみます。
↓「○が足、□がハードルとします」
おかしいと思いませんか?
色は違えど、○が4つあります。
「インターバルは3歩じゃないの?」
と思うかもしれませんが、実際のところは4歩なのです。
じゃあ、3歩+1歩はどこから生まれた1歩なのでしょう。
この正体は着地の1歩です。
インターバルを3歩で走って着地で1歩という感じです。
ですので児童に意識させたいリズムは
1 2 3 3 1 2 3 3 1 2 3 3 1 2 3
このようになります。
口にすると
「いち、に、さ~ん、いち、に、さ~ん、いち、に、さ~ん」
という風になります。
3が長くなるのです。
なぜ4にしないのか?
それは着地は歩数にいれないというのが何となくの決まりになっています。
たとえば走り高とびでも「リズミカルなステップ」とありましたが、5歩で助走をとって、最後の着地が1歩あったとしても、助走を6歩でやるとはいいませんよね?
だから着地は歩数に含まれません。
そしておなじみの「文部科学省 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編」にも
「インターバルは3歩または5歩で走ること」
と書かれているのです。
やはり着地は歩数に含んでいないということです。
この5.5m~7mのインターバルを3歩、5歩でかけぬけることがハードル走攻略のカギとなります。
③ ハードリング
インターバルと並ぶハードル走における最重要課題のハードリングです。
これはハードルを跳び越す技能です。
「跳び越す」と言っていますが、実際は跳ぶイメージではなく、またぐイメージです。
だから、またぎ越すを意識した方が良いでしょう。
ハードリングで一番意識しなければいけないことは、頭の位置を変えないことです。
たくさんジャンプしてハードルを跳び越えると、ハードルには引っかかることはありませんが、その分ジャンプから着地に時間がかかってロスタイムが増えてしまいます。
また、跳ぶことで着地が乱れる場合があります。
頭の位置を変えずに走りましょう。
でも実際には頭の位置を変えずに走るのは難しすぎます。
なぜなら、ハードルがあるからです。
目の前に障害物があるのに頭の位置を変えずに、できるだけスピードを落とさずに走りぬけるのは困難です。
だからやることは、頭を下げるのです。
下げると言ってもおじぎをするのではなく、前を見たまま腰から曲げるというイメージです。
そのときに、右足が前になるのだったら左手を前に出すし、左足が前だったら右手を前に出します。
こうすることであたかも頭の上下動がなくまたぎ越しているように見えてきます。
そしてふみ切りとハードルまでの距離も確認しましょう。
近すぎればハードルに当たってしまうし、遠すぎれば跳ぶことができません。
この位置を何度も何度もしてクリアしましょう。
④ フィニッシュ
最後は短距離走すべてで言えることですが、最後まで手をぬかずにかけ抜けることを指導しましょう。
3 ハードル走、授業の場
ハードルの分解的指導がわかったので、これを指導するための場を作りましょう。
一つ「シンクロハードル」というのを設けました。
今回のハードルだけでなく多くの種目で有効な「シンクロ」です。
ハードル走ではどのように有効なのかというと、リズムが身に付きます。
ペアを組んで、相手と同じ脚でスタートして
「いち、に、さ~ん、いち、に、さ~ん、いち、に、さ~ん」
という風に声をかけ合いながら走るとリズムが自然と身に付きます。
最初はゆっくりでもいいので、慣れてきたらスピードを上げてみましょう。
子どもにぜひ伝えてほしいことは、ハードル走という競技は下手な人がハードルを倒すのではなく、上手な人がハードルを倒すということです。
なぜなら、上手になればなるほどハードルぎりぎりをまたぐからです。まだ怖かったり定着していない子はハードルを倒すことさえできません。
だから倒したことは恥ずかしいことではなく、上手になった証ということです。
4 まとめ
学校体育の「ハードル走」について解説しました。
ハードル走は障害物を跳び越えてできるだけ速くゴールする種目です。
体育の技能は分解的に技能を分けると身に付きやすくなります。
ハードル走の分解的技能は
② インターバル
③ ハードリング
④ フィニッシュ
です。
分解的技能に合わせて場を作ると効果的に技能を身に付けることができます。
学校を卒業してしまうとハードルを跳ぶことはあまりないのですが、牧場で羊の群れに出会ってしまうことは日常的にあることなのでしっかりとしたハードル技能を身に付けると羊の群れを上手に跳び越えることができると思います。
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