体育授業を考えよう!分解的指導の方法を跳び箱を例に解説!

体育

体育の授業で指導をしていて
「〇〇の運動ができないんだよなぁ・・・」
「練習しても練習してもできなくて歯がゆく感じる・・・」
そんな経験ってありませんか?
今回は体育や運動全般的に言える指導の方法を跳び箱を例にしながら復習していきたいと思います。
改めて「あぁ、体育指導はこんなだった」と思い出してもらえれば幸いです。

1 分解的指導

運動の技能を習得するためには、技能の一連の流れをいかに写真のコマ送りのように見ることができるかにかかっています。
このブログでは、そのような指導を「分解的指導」と呼んでいます。
一連の動作がどのようなしくみでできているかを把握することで、運動技能を身につけるための分析に使うことができます。
やみくもに練習をしたのでは、その技能はいつか身につくかもしれないけれど、とても遠回りしていることになります。
できれば決められた体育の時数内で技能習得を狙いたいです。
今回話題にする跳び箱であったら「助走」「踏切」「着手」「着地」の4つの場面に区切ってみることがとても重要です。
陸上のハードル走でも同じようなことが言えるでしょう。
やはりコマ送りはとても重要です。
また、それを横から見たコマ送りにすることがさらに良いのです。
一つ一つの細かな技の組み合わせが一つの大きな技となっています。
そしてそれぞれの技を区切ってみて、どの部分が自分にとって一番劣っているのかを理解することが習得への近道と言えます。
例えば・・・助走の歩数が合わない場合、踏切の練習をしていても跳び箱を跳べるようにはならないし、踏切が苦手なのに、助走練習ばかりをしていても跳べるようにはなりません。
一つ一つの区切った技能を「練習→習得」してからそれらを繋げて、「一連の流れ練習」をすると驚くほど成果が上がっているはずです。
自分の苦手部分をよく理解して、練習に取り組んでみましょう。

2 練習に入る前のウォーミングアップ

いきなり跳び箱を跳ぶ練習には入りません。
やはりどのような運動にもしっかりしたウォーミングアップが必要です。
例えばどんなウォーミングアップがあるでしょうか・・・

1 馬跳び

いにしえから大流行の馬跳びですが、これって実はかなりいいウォーミングアップになります。
馬跳びがしっかりできるだけで、もしかしたら跳び箱を跳ぶことができるのではないかというくらい重要です。
跳び箱よりも圧倒的に不安定な相手の背中をしっかりと押す練習です。
この押すという動作こそが今後の「着手」に直接的につながっていきます。
馬跳び練習のときには助走はしません。
助走をすることで相手が重みに耐えられなくなり、2人して危険を伴ってしまうからです。
また、踏み切るときには両足で踏み切るようにしましょう。
これもまた、跳び箱に直接的に必要な技能となります。
踏み切りのときに、足を前後に開くこと、片足で踏み切ることは絶対にしないようにしましょう。

2 うさぎ跳び

地面でうさぎ跳びをしましょう。どこか線を決めて、両手を平行に付いてその両手を外側から両足が跳び越えるように「ぴょん!」と跳びます。
このときに重要なことはとにかく付いた手よりも前に足を出すということです。
両手よりも肩が前にでなければできない技です。
「なぜ?」かということは後でも話しますので、ここでは手よりも前に足を出すことを意識して練習しましょう。

3 かえるの足打ち

これもまた着手したときに跳び箱を押す練習にもなるのですが、かえるの足打ちをして手で押す感覚を身に付けましょう。
このときに気を付けなければいけないのは両手はパーです。

3 技能を断片的に見る

跳び箱の技能を4つの場面に断片的に切ってみました。
一つ一つをできるようにして4つを組み合わせると・・・できてる!

① 助走

小学校の跳び箱には、実は助走はあまり必要がないと思っています。
誤解のないように説明しますが、体操の跳馬のような技や小中高生が行う跳び箱での前方展開などの技は絶対に必要です。
ですが、ここで言いたいのはまだ跳び箱を跳ぶことができない人はまずは助走なし(ゼロ助走)で跳んでみましょう。
助走で一番困難なのは歩数を合わせることです。
その歩数が合わないがために踏切板やロイター板をうまく踏めないでいるのです。
「だったら助走をはじめからなくしてしまおう!」という考え方です。
ロイター板の前に片足(どちらの足をついていても良い)で立って、ロイター板に両足で思い切り乗る練習をしましょう。
そのときのコツはロイター板を踏む直前の腕は後ろから前です。
つまり、踏み切る前は後ろからということです。
踏んだ瞬間に腕を前に振り子のように出しましょう。
その振り子を使って跳び箱の着手へと繋げていきます。
高い段になってくるとゼロ助走というわけにはいかなくなります。
そのときは3歩助走でやってみます。
さらに高い段になったら5歩助走、7歩助走と奇数で合わせていくのが良いです。
決して「なんとなくこの辺・・・」という助走の取り方はやめましょう。
足が合わなくなると踏切がうまくいかなくなります。
また、助走をとればとるほど跳べるというのは迷信です。
だったら1km先から助走をとったらとんでもない高さの跳び箱を跳べることになります。
跳び箱の高さ、跳ぶ人の筋力によって助走をうまく使いこなすことが大切です。
跳び箱の技能が身につけば8段くらいまではゼロ助走でいけます。
助走をしなければしないほど跳び箱の技能が身についています。

② 踏切

踏切は先ほどから何度もお伝えしたように「両足で強く!」です。
「バン!」
という大きな音がするように乗ってください。
「ババン!」では片足ずつ乗っていることになるので力が分散してしまいます。
必ず両足で乗りましょう。
乗った後はおしりから浮き上がっていくイメージです。
助走に頼りすぎてしまうと踏んだ瞬間に「上」ではなく「前」だけの力をロイター板からもらってしまいます。
踏んだ瞬間に「上」と「前」の間の「斜め前」を意識しましょう。
この踏切が力強いとゼロ助走でも8段くらいまでなら軽く跳べます。

③ 着手

着手で大切にしたいことは
①手を平行につく
②手をつく場所
③肩を手よりも前に出す
という3つです。
足も平行についていたのですが、手も同じです。
力が分散してしまうので、必ず平行に同時に両手をつきましょう。
同時につかないと怪我のリスクも高まります。
小指などは意外と簡単に骨折してしまいます。
ちゃんと指を曲げずに着手をしましょう。
手をつく場所はやはり跳び箱の奥です。
手間につけばつくほど跳べなくなります。
理屈は簡単です。
跳ばなければいけない距離がのびるのです。
それでも跳べる人はいますが、わざわざ難しく跳ぶ必要もないと思います。
新しく身に付ける技能なのであれば、跳び箱の奥に手をつくというのを覚えない理由がありません。
最後に肩を手より前に出すということです。
ウォーミングアップの馬跳びのときに練習をしました。
付いた手よりも肩が後ろにあったのでは跳び箱は絶対に跳べません。
手よりも肩が前に出てこそスムーズなものになります。
肩が前に出ないというのは怖くて自分でストップをかけています。
跳び箱が怖くないという人は自然に、この手よりも肩が前というのを行っています。

④ 着地

着地は意外と重要視されていないのですが、体操競技だったら着地の一歩の乱れは減点対象となります。
ただの跳び箱かもしれませんが、フィニッシュである着地は確実に決めましょう。
着地で重要なことは「安全に!」ということです。
この一言につきます。
では、どのような着地が安全なにでしょう?
① 足で着地する
② 膝を曲げて着地する
という2つです。
①の足で着地なんて当たり前だろ!って思う方は結構いると思いますが、おしりから着地してしまうパターンってよく見かけます。
足で、もっと言えば足裏で着地しないと骨折などの大けがに繋がりますので、最後の着地はきちんと決めましょう。
②の膝を曲げて着地ですが、膝を伸ばしたままでは全身にかかる負担が大きすぎます。跳び箱が得意な人は、無意識に着地も「ふわり!」とします。
せっかく助走から頑張って着地までいったのに、着地が失敗なんて嫌ですよね!だから安全な着地はとても重要です。

どうでしょうか?
分解的に見ると、児童のどこに課題があるのかが見えてきませんか?
体育の授業ではこの分解的指導がとても重要なことなのです。

4 まとめ

今回は、跳び箱を例にあげて分解的指導の重要性について復習し、解説しました。
跳び箱を分解すると「助走」「踏み切り」「着手」「着地」に分けられます。
子どもたちのどこに課題があるのかを分解することで明確にすることができます。
助走に課題がある子に対して、着手の指導をしてもその子は成長しません。
全体指導ではそのような事態に陥ってしまうことが多々あるのです。
だからたくさんの場を用意して、全体指導をしながら分解的な個別指導を両立させるのです。
もちろんですが、すべての運動のすべての技能をこのように断片的に区切ることはできません。
例えば「なわとび」はコマ送りのように区切るのは難しいですよね。
これはこれで違った技能の身に付け方があります。
ですが、分解的に見るというのは運動技能の習得にはとても役立ちますので、技能を身に付けたい場合は、練習前にコマ送りになった自分を想像してみてください。
想像が困難だったら、横から映像を撮って見てみるといいかもしれません。
今は簡単に動画が撮れる時代ですから使わない手はありません。ただ、大人になると跳び箱をする機会は激減します。
でもその代わりどこからともなく
「♪ランランララランランラン、ランランラララン♪」
という幻想的な歌声が聴こえてくることは爪を切るくらい日常です。
その日常のときには王蟲の群れがやってくるときです。
しかも怒り狂っているので止めることは不可能です。
そんなときに役立つのが「助走」「踏み切り」「着手」「着地」という跳び箱技能です。
華麗に王蟲の群れを交わせるように子どものうちから身につけておくと良いと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました