リオオリンピックでは日本の男子4×100mリレー(4継)は劇的な銀メダルを獲得しました。
東京オリンピックでも例外なく注目競技の一つに挙げられています。
今回はリオオリンピックから得たものを振り返り、東京オリンピックではどこに注目すべきなのかを解説していきたいと思います。
最後まで読んでいただくと、4継が楽しみで楽しみで仕方なくなってしまい、夜しか眠れないかもしれません。
1 リオオリンピックから学ぶもの
リオオリンピックも今大会東京オリンピックに負けず劣らずのメダルラッシュでした。
日本の反対側での開催ということで日本人は寝不足の目をこすりながら選手たちを応援していたことでしょう。
東京オリンピックには新種目がたくさんある関係で、初の王者という言葉がよく聞こえます。
リオオリンピックでは比較的従来の種目の中で「日本初」という言葉がよく聞こえてきました。
卓球、テニス、バドミントン、競歩、カヌー・・・そう、たくさんの種目でした。
そのときが初のメダル獲得ではないのですが、陸上男子4×100mリレーという短距離走もすごいことをした競技の一つでした。
北京オリンピックで銅メダルを獲得したときには強豪国のバトンミスや引き継ぎ違反等が後押ししてのメダルでした。
リオオリンピックは違いました。
強敵アメリカと真っ向勝負をして戦って勝ったのです。
日本人だとなかなか想像することができないような出来事です。
ですが、それをやってのけたのです。
次にやったら勝てるかと言ったらそれは勝負の世界なのでどうかわかりません。
でも日本人がやりました。
「日本人はスプリントで世界に勝てるはずがない」
それが世の中の定説です。
でも、外国の人がどれだけそんな風に言ったとしても、それを証明できるのは、本当は日本人だけなのです。
日本人自身が「日本人はスプリントでは勝てない」とそう思っているのなら、100年経っても勝つことはありません。
誰かが「そんなのウソだ」って言ってそれを証明しなければいけなかったのです。
「日本初」というのは「日本人は勝てない」というマイナスの定説から抜け出すための大きな一歩だと当時感じました。
「自分にはできない」「自分には勝てない」
「自分ならできる」「自分なら勝てる」
決めるのはいつだって自分です。
口癖のようにすぐに「えぇ~無理」って言うのはやめて「まぁやってみるか」からスタートすることの大切をを学んだリオオリンピックでした。
2 リオ五輪から東京五輪
あれから5年が経ちました。
それから日本人はもともとの定説にもどってしまって「スプリントでは勝てない」に戻ったのでしょうか。
違います。
勝負事なので、東京オリンピックでどうなるのかはそれはまったくわかりませんが、今までは
「勝てるはずがない」
という種目だったのに
「メダルに期待」
という種目に変わったことは確かです。
桐生選手を皮切りにたくさんの日本人選手が100m走を9秒台で走るようになりました。
あの時のリレーが大きな自信に繋がったことは間違いないことですし、日本人自身の意識が変わったのだと感じました。
そんな中、東京五輪が開催されました。
たくさんの競技で活躍が目立ち、メダルラッシュに沸いています。
まだ陸上競技が始まったわけではありませんが、少し4継について考えてみたいと思います。
3 アンダーハンドパス
日本のバトンパスは世界一とも言われています。
研ぎ澄まされたバトンパスによってもたらされる効果は4人のタイムを足した数よりも速くなります。
日本記録は「37秒43」です。
もしも38秒で走っていたとしても、1人9秒5程度で走っていなければいけないような記録です。100m世界記録はウサインボルトの9秒58なので、ちょっと難しい記録です。
ですが、個人のタイムを足した数はリレーのタイムではありません。
バトンだけでも3秒~4秒以上のタイムを縮めているのです。
そんな日本が採用しているバトンパスは「アンダーハンドパス」です。
多くの国が採用するオーバーハンドでは、腕を伸ばす分走者間の距離を長くとれるという利点がありますが、腕を思い切上げて加速するので不自然な姿勢になってしまいます。
超一流のアスリートですら腕を上げることによるタイムラグが生まれてしまうのです。
それに比べてアンダーハンドは自然な体勢でパスができ、スムーズに加速できます。
日本は01年からアンダーを採用していて、それをどんどん進化させています。
リオオリンピックの頃からは、オーバーとアンダーの中間くらいの日本独自のバトンパスになっています。
どんなパスを見せてくれるのか、リレーを見るときの一つの観点にしてみてください。
4 マーキング
前走者がどこまで走ってきたらスタートを切ればいいのかというのはなんとなくの感覚や雰囲気ではありません。
しっかりとマーキングしているのです。
何でマーキングをしているのかというとテープです。
小学生だとカラーテープを貼って目安にしています。
試合当日までに何度も何度も練習をくりかえし、そのマーキングする場所を確認します。
トップ選手は「30足長前後」を取っています。
30足長というのは、「足のサイズ30個分の距離」です。
だから人によって多少違うのです。
足のサイズが26cmの選手は30足長を取ると「26×30=780cm(7m80cm)」となります。
足のサイズが29cmの選手は30足長を取ると「29×30=870cm(8m70cm)」となります。
このように足のサイズによって90cmも変わってきます。
ですから、前走者とのスピードの差や自分の加速によって30足長が29足長や31足長に変わることになります。
スタートを切るタイミングが順位に大きく関わってくることは間違いないので、このマーキングというのは大切です。
小学校のリレー指導では10足長あたりから練習をはじめて15~20足長で合わせてくることが多いです。
テレビ中継でもそのマーキングシーンが見られれば、何歩くらいとっているのかを見てみるのもみどころの一つです。
5 スピード低下率
東京オリンピックでは各種目で、加速率やどこでトップスピードになったのか、走る速度などが最先端技術によって表示されます。
陸上のスプリント競技でも例外ではありません。
100mを全力で走るとだいたいの選手は50m~60mあたりでトップスピードに達します。
そしてそこを頂上として、だんだんとスピードが下がっていきます。
あの人類最速の男「ボルト」ですら、トップスピードを100m間保っていないのです。
よく「後半に伸びてきた!」という解説を聞きますが、厳密にいうとそれは後半に伸びたのではなく、スピード低下率が小さかったのです。
つまり他の選手が50mからスピードが落ちてきたのに対して、65mからスピードが落ちてきたら、後半に伸びてきたように見えます。
これが「後半に伸びてきた」の正体です。
バトンパスは30mのテイクオーバーゾーン内で行い、減速する前走者と加速する次走者がより速いスピードで交わることが大切です。
その絶妙なところでのバトンパスがみどころです。
6 まとめ
今回は陸上4×100mリレーのみどころについて解説しました。
日本はリオオリンピックで堂々たる銀メダルを勝ち取りました。
「金じゃなくて銀でしょ?!」
という声はないとは思いますが、日本人がスプリント競技でメダルを獲るなんてひと昔前では想像もできないことでした。
「日本人はスプリントでは勝てない」
これが世の中の定説だからです。
しかし、勝てるか勝てないかを決めるのは日本人です。
日本人が「勝てない」と言い続ければ、いつまでも勝つことはありませんが、誰かが「それは嘘だ、勝てる」と本気で言えばそれは本当に嘘になります。
それを信じていたからこそ、日本にスプリント競技で銀メダルをもたらしたのです。
勝負事なので、東京オリンピックでどうなるのかはそれはまったくわかりませんが
「勝てるはずがない」
という種目だったのが
「メダルに期待」
という種目に変わったことは確かです。
そんなリレーではどのようなところに注目し、どんなところがみどころなのでしょうか。
研ぎ澄まされたバトンパスによってもたらされる効果は4人のタイムを足した数よりも速くなります。
日本記録は「37秒43」です。
もしも38秒で走っていたとしても、1人9秒5程度で走っていなければいけないような記録です。
ですが、個人のタイムはそのタイムではありません。
バトンだけでも3秒~4秒以上のタイムを縮めていることになります。
そんな日本が採用しているバトンパスは「アンダーハンドパス」です。
多くの国が採用するオーバーハンドでは、腕を伸ばす分走者間の距離を長くとれるという利点がありますが、腕を思い切上げて加速するので不自然な姿勢になってしまいます。
超一流のアスリートですら腕を上げることによるタイムラグが生まれてしまうのです。
それに比べてアンダーハンドは自然な体勢でパスができ、スムーズに加速できます。
日本は01年からアンダーを採用していて、それをどんどん進化させています。
リオオリンピックの頃からは、オーバーとアンダーの中間くらいの日本独自のバトンパスになっています。
どんなパスを見せてくれるのか、リレーを見るときの一つの観点にしてみてください。
しっかりとマーキングしているのです。
試合当日までに何度も何度も練習をくりかえし、そのマーキングする場所を確認します。
トップ選手は「30足長前後」を取っています。
30足長というのは、「足のサイズ30個分の距離」です。
だから人によって多少違うのです。
足のサイズが26cmの選手は30足長を取ると「26×30=780cm(7m80cm)」となります。
足のサイズが29cmの選手は30足長を取ると「29×30=870cm(8m70cm)」となります。
このように足のサイズによって90cmも変わってきます。
ですから、前走者とのスピードの差や自分の加速によって30足長が29足長や31足長に変わることになります。
スタートを切るタイミングが順位に大きく関わってくることは間違いないので、このマーキングというのは大切です。
テレビ中継でもそのマーキングシーンが見られれば、何歩くらいとっているのかを見てみるのもみどころの一つです。
陸上のスプリント競技でも例外ではありません。
100mを全力で走るとだいたいの選手は50m~60mあたりでトップスピードに達します。
そしてそこを頂上として、だんだんとスピードが下がっていきます。
あの人類最速の男「ボルト」ですら、トップスピードを100m間保っていないのです。
よく「後半に伸びてきた!」という解説を聞きますが、厳密にいうとそれは後半に伸びたのではなく、スピード低下率が小さかったのです。
つまり他の選手が50mからスピードが落ちてきたのに対して、65mからスピードが落ちてきたら、後半に伸びてきたように見えます。
これが「後半に伸びてきた」の正体です。
バトンパスは30mのテイクオーバーゾーン内で行い、減速する前走者と加速する次走者がより速いスピードで交わることが大切です。
その絶妙なところでのバトンパスがみどころです。
以上が東京オリンピックにおける陸上4×100mリレーの注目とみどころです。
日本の堂々たる走りに期待しつつ、その走りが未来のスプリンターの子どもたちに影響してくれることを願っています。
ただ、子どものうちは体育の授業や運動会でリレーをすることはあるのですが、大人になるとリレーをする機会は激減します。
でも迷子になった「めいちゃん」が、大きなとうもろこしを抱えているところに出くわすことはよくあることです。
そんなときにはとうもろこしを30mのテイクオーバーゾーンを上手に使ってめいちゃんからアンダーハンドで受け取って走ると、猫バスのスピードに負けずに七国山病院まで辿り着くことができます。
この夏にもその場面に数回は出くわすはずなので、4×100mリレーをしっかり見て研究しておいてください。
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