ハードル走をやるとついついタイムに目がいきがちです。
ですが、ハードルで大切なのはハードリングとインターバルです。
タイムだけに意識が向くと、運動が苦手な子は嫌に拍車がかかります。
今回はタイムを伸ばすことだけでなく、ハードリングやインターバルを身につけることを意識したハードル走の授業について指導案付きで解説したいと思います。
1 ハードル走の分解的指導
体育の技能は分解的に捉えることがとても重要であるということを今までのブログでもお伝えしてきました。
跳び箱であれば
「①助走、②踏み切り、③着手 ④着地」
の4つに分けられます。
これら4つで自分が劣っているところを身に付けて1つのものに仕上げて行くことが技能を身に付けるためには重要です。
ではハードル走では、どのように分解したらいいのでしょうか。
① スタート
② インターバル
③ ハードリング
④ フィニッシュ
の4つです。
これらを身につけることによってスムーズな「ハードル走」へとつながっていくのです。
それでは一つ一つを解説したいと思います。
① スタート
短距離走なので、スタートの技能は必要です。
しかし、競技ではなく体育ですのでスターティングブロックを使ったり、フライングにならないようにしたりということではありません。
スタートから第1ハードルまでに上体を起こすことを意識させるのでいいと思います。
ハードル走においては、スタートはそこまで身につけさせたい技能というわけではありません。
② インターバル
インターバルというのはハードルとハードルの間の距離のことです。
このインターバルをリズミカルに走ることがハードル走のスピードを上げる要素の最重要課題とも言えます。
インターバルの距離は、小学生だと5.5m、6m、6.5m、7mくらいが良いでしょう。
ただ、競技としてやるハードル走ではないので、体育の授業でインターバル7mは少し長いかもしれません。
インターバルの一番理想的な歩数は3歩ですが、小学生ですと5歩くらいになってしまう場合があります。
7歩になると多いと思います。
3歩を目指すのでインターバル7mというのは少し長いという印象です。
「あれ?3歩、5歩、7歩って聞いたことあるぞ?」
と思う方もいるかもしれません。
そうです、体育ではたびたび出てくるリズミカルなステップはなぜか奇数の3、5、7歩なのです。
走り高跳びのときもそうでした。
インターバルをこの歩数で走ることがスムーズにハードルを走り抜けるコツともいえます。
ここで勘違いが起こります。
ちょっと考えてみてください。
3歩でインターバルをするとして考えてみます。
↓「○が足、□がハードルとします」
○ ○ ○ □ ● ○ ○ ○ □ ● ○ ○ ○ □ ● ○ ○ ○ □
おかしいと思いませんか?
色は違えど、○が4つあります。
「インターバルは3歩じゃないの?」
と思うかもしれませんが、実際のところは4歩なのです。
じゃあ、3歩+1歩はどこから生まれた1歩なのでしょう。
この正体は着地の1歩です。
インターバルを3歩で走って着地で1歩という感じです。
ですので児童に意識させたいリズムは
○ ○ ○ □ ● ○ ○ ○ □ ● ○ ○ ○ □ ● ○ ○ ○ □
1 2 3 3 1 2 3 3 1 2 3 3 1 2 3
このようになります。
口にすると
「いち、に、さ~ん、いち、に、さ~ん、いち、に、さ~ん」
という風になります。
3が長くなるのです。
なぜ4にしないのか?
それは着地は歩数にいれないというのが何となくの決まりになっています。
たとえば走り高とびでも「リズミカルなステップ」とありましたが、5歩で助走をとって、最後の着地が1歩あったとしても、助走を6歩でやるとはいいませんよね?
だから着地は歩数に含まれません。
そしておなじみの「文部科学省 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編」にも
「インターバルは3歩または5歩で走ること」
と書かれているのです。
やはり着地は歩数に含んでいないということです。
この5.5m~7mのインターバルを3歩、5歩でかけぬけることがハードル走攻略のカギとなります。
③ ハードリング
インターバルと並ぶハードル走における最重要課題のハードリングです。
これはハードルを跳び越す技能です。
「跳び越す」と言っていますが、実際は跳ぶイメージではなく、またぐイメージです。
だから、またぎ越すを意識した方が良いでしょう。
ハードリングで一番意識しなければいけないことは、頭の位置を変えないことです。
たくさんジャンプしてハードルを跳び越えると、ハードルには引っかかることはありませんが、その分ジャンプから着地に時間がかかってロスタイムが増えてしまいます。
頭の位置を変えずに走りましょう。
でも実際には頭の位置を変えずに走るのは難しすぎます。
なぜなら、ハードルがあるからです。
目の前に障害物があるのに頭の位置を変えずに、できるだけスピードを落とさずに走りぬけるのは困難です。
だからやることは、頭を下げるのです。
下げると言ってもおじぎをするのではなく、前を見たまま腰から曲げるというイメージです。
そのときに、右足が前になるのだったら左手を前に出すし、左足が前だったら右手を前に出します。
こうすることであたかも頭の上下動がなくまたぎ越しているように見えてきます。
そしてふみ切りとハードルまでの距離も確認しましょう。
近すぎればハードルに当たってしまうし、遠すぎれば跳ぶことができません。
この位置を何度も何度もしてクリアしましょう。
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④ フィニッシュ
最後は短距離走すべてで言えることですが、最後まで手をぬかずにかけ抜けることを指導しましょう。
2 指導案
今回公開する指導案は6年生の陸上 ハードル走の略案です。
シンクロハードル
指導案中に出てくる「シンクロハードル」というのがあります。
これはインターバルのリズムを身につけるのにとても有効です。
場は、園芸用の支柱のような長い棒をマーカーの上に乗せて、とても低く横長なバーを作ります。
そのようなバーを5か所ハードルと同じように並べます。(上記場の設定参照)
2人か3人が横並びで同時に跨げるくらいの横の長さがあれば良いです。
子どもたちをペアもしくはトリオにします。
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① 最初に出す足を決める「右足からスタートしよう」「ぼくたちは左足からスタートしよう」
② 1番最初のバーまでの歩数を決めます。「ぼくたちは5歩だ」
③ 踏切の足、跨ぐときの足、着地の足を決めます。
④ 重要なのは踏み切りのときに「さ~ん、いち、に、さ~ん」という声を2人もしくは3人で声を合わせることです。
⑤ そのままゴールまで進みます。
最初のうちはゆっくりでなければ足も声を合わせられません。
慣れてきたら
「さっきよりスピードが出せるペアは出してみよう」
という声かけでチャレンジする子たちが増えます。
2人以上で合わせながらやっているので、自然にリズムが身についてしまって、本物のハードルでもいつのまにかできるようになっています。
これがシンクロハードルの効果です。
次の段階としては
「スタートの足は違ってもいい」
ということにすると、自分の跳びやすい足からスタートすることができます。
まずはリズムを覚えることが先決ですので、跳びやすくても跳びにくくてもシンクロしてやってみましょう。
3 まとめ
今回は陸上のハードル走の指導案・場の設定を公開しました。
指導案は書けば書くほど慣れてきて上手になってきます。
面倒だからなるべく書きたくない気持ちはわかりますが、自分のスキルアップのために、年間1本くらいは書いてみてはどうでしょうか?
以上がハードル走の指導案・場の設定の公開と、指導案の説明でした。
ただ、大人になるとハードル走やる機会が激減します。
ですが人生の困難に立ち向かうハードルを跳ぶ機会は増えてきます。
困難はヤクルトくらい低い時もあればぬりかべくらい高い時もあります。
ヤクルトくらいのときにはシンクロハードルで身につけたリズムで華麗に跳び越えることができます。
ぬりかべくらいのときには「ちょっと横になってもらってもいいですか?」とそこまで生きてきた知性と経験をもとに跳びやすい方法を導きだすことによってクリアできます。
小学校で学ぶハードル走はただ跳び越えればいいやというものではなく、どんな困難にも立ち向かって、ゴールを目指そうという意図が込められて・・・いてほしいです。
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