走り高跳びって、あの横に伸びたバーをジャンプだけで跳び越えるという跳躍力の競技です。
背が高い人が有利とか、ジャンプ力がある人が有利とか言われますが、実はコツが存在するんです。
今回は陸上競技としての走り高跳びではなく、体育授業としての走り高跳びのコツについて解説したいと思います。
そのため今回の跳び方は「はさみ跳び」で解説させていただきます。
これを読んでいただければ、颯爽とバーを跳び越えて、涼しい顔で着地できるかもしれません。
1 走り高跳びの特性
走り高跳びはリズミカルな助走から上方へ踏み切り、より高く跳ぶことに挑戦する運動です。
文部科学省が出している学習指導要領には
走り高跳びでは、その行い方を理解するとともに、試技の回数やバーの高さの決め方などのルールを決めて競争したり、自己の記録の伸びや目標とする記録の達成を目指したりしながら、リズミカルな助走から力強く踏み切って跳ぶことができるようにする。
と書かれています。
学習指導要領というのは文部科学省が出している教師向けの教科書のようなものです。
ここに書かれていることをもれなく教えることができ、理解させることができればとりあえずは問題ないという範疇です。
やはり学習指導要領、ここに注目すべきことが書かれていました。
走り高跳びで言うと、「リズミカルな助走」「力強い踏み切り」を習得させましょうということです。
逆に言うと、「高く跳べる子を評価しましょう」とは書かれていません。
だから、単に高く跳べる子が評価されたのでは、この学習指導要領の趣旨とはズレているということになります。
ただ、高く跳べる子というのはだいたいは、この内容を網羅していると言っていいでしょう。
内容を理解し、練習をしたからこそ、高く跳べているのですから。
2 走り高跳びの技能を分解する
体育における技能の習得はほとんどで言えるのですが、指導者が技能をいかに的確に分解して見ることができるかで決まってきます。
そのため、今回も走り高跳びという技能を分解したいと思います。
先ほど学習指導要領の中にもでてきたように、「リズミカルな助走」「力強い踏み切り」というのが重要なキーワードとなってきそうです。
私はそれに加えて、「ダイナミックな空中姿勢」「安全な着地」が走り高跳びの技能の分解だと思っています。
この4つを習得すれば、今よりも高く跳ぶことは可能なはずです。
ここで言いたいのは、「今よりも」ということです。
習得したからといって全員が150cm以上を跳べるということではありません。
何も教わっていない状態からだったら、全員「今よりも」高く跳ばせることができるということです。
3 リズミカルな助走
ではリズミカルな助走とはどんなものなのでしょうか。
音楽をかけてノリノリで跳ぶとこではありません。
走り高跳びの助走は長ければ長いほどいいというものではありません。
また、全力疾走のように速ければ速いほどいいというわけでもありません。
助走にはちゃんとしたリズムがあるのです。
今回紹介した助走歩数は「3歩」「5歩」「7歩」です。
「あれ?」って思う方もいるかもしれません。
そう、跳び箱のときにも同じようなことを言っていました。
体育の技能で助走が必要なときには「少ない助走」で「奇数歩」というのが多いのです。
それは助走に気を取られてしまわないためという理由もかなり含まれています。
助走が長ければ長いほど足を合わせるのが困難になります。
そこにはあまり気を取られないために、少ない助走が重要だと思ってください。
リズムは
5歩の場合・・・「トーン、トーン、ト、ト、トン!」
7歩の場合・・・「トーン、トーン、トーン、トーン、ト、ト、トン!」
です。
つまり5歩の場合は「2歩+3歩」で、7歩の場合は「4歩+3歩」です。
あとの3歩というのは上に力をもらうために速くを意識して、先の2歩や4歩というのは弾むように大股で走るのがポイントです。
この「トーン、トーン、トーン、トーン」+「ト、ト、トン!」というのが「リズミカルな助走」という意味だと思ってください。
なんでもいいから単に走って跳べば良いというわけではないのです。
4 力強い踏み切り
力強い踏み切りは、最後の「ト、ト、トン!」の「トン!」の部分です。
この「トン!」のときにバーから近い方の足を振り上げ、遠い足で床をしっかり蹴ります。
この遠い足の蹴りこそが「力強い踏み切り」となります。
踏み切ったときのコツですが、お腹の中心のおへそのあたりを上に持ち上げる感じです。
身体全体を上に持ち上げられればもちろんいいのですが、「おへそを上に」を意識すると身体全体を引き上げてくれます。
注意したいのは、「前に」ではなく「上に」です。
もちろんですが、真上に跳んだのではその場に着地してしまいますので、正確には斜め前の上ですが、一言でも子どもに「前」という言葉を使うと、助走の力を前方向に使ってしまって、前に吹っ飛んでしまう子がいるので、慎重に伝えた方が良いでしょう。
5 空中姿勢
ここで注意したい空中姿勢は、最初に振り上げた太ももを自分のお腹に引き寄せるということです。
上体を起こしすぎると高く跳ぶことができません。
太ももをしっかりとお腹に引き寄せてあげましょう。
また、空中姿勢で重要なもう一つは「後からくる踏み切り足」です。
せっかく前の足がバーを通過したのに、後ろの足がバーに引っ掛かるということはよくあることです。
そのため、後ろの足がしっかりバーを抜けるように回してくることを意識することが大切です。
ゴムなどを2本横に張ってバーを2本ある状態にします。それをはさみ跳びすると、後ろの足を抜く練習になります。
その際、抜き足の練習なのでゴムバーを高くしないようにしましょう。
6 着地
走り高跳びは安全な着地をしなければいけません。
はさみ跳びの場合、足からの着地以外は認められていません。
高く跳んでお尻や背中から着地したくなる子も中にはいるのですが、それは失敗試技となります。
必ず先にバーを通過した振り上げ足から安全に着地ができるようにしましょう。
エバーマットを着地場所に敷いて安全を確保する場合もあるのですが、エバーマットがあると子ども心にお尻から着地したくなります。
そのため、私は足裏で着地させるためにエバーマットではなく、マットで良いと思っています。
7 走り高跳びの場
走り高跳びの場でしたら、このような場を作るのをおすすめします。
中心に「自己記録確認」をできる場を設けて、そして自分の課題を見つけたらそれぞれの場所に移動して課題に取り組める場がいいと思います。
※これは体育館でやった場合の場です。
8 まとめ
走り高跳びは跳躍力の運動です。
そして分解すると
「リズミカルな助走」
「力強い踏み切り」
「ダイナミックな空中姿勢」
「安全な着地」
の4つになります。
3歩、5歩、7歩で練習しましょう。
7歩の場合は「トーン、トーン、トーン、トーン、ト、ト、トン!」で4歩+3歩となります。
最後の3歩は上に力をもらうために速く短くです。「力強い踏み切り」
最後の「ト、ト、トン!」の「トン!」の部分です。
バーに近い足が振り上げ足、遠い足が踏み切り足です。
踏み切り足で床をしっかり蹴って上に跳びましょう。「空中姿勢」
1つ目の注意はお腹に太ももを引き寄せることです
2つ目の注意は後ろからくる足をしっかり抜くことです。
これで「力強い踏み切り」でもらった力を上手に使うことができます。「安全な着地」
今回紹介したはさみ跳びでは、足の裏での着地しかありません。
その他の部分で着地した場合は失敗試技となります。
以上が走り高跳びの技能習得のための解説です。
たくさんの子が、走り高跳びっておもしろいって思ってくれたら最高です。
日常で走り高跳びを使う場面はそうそうありませんが、大人になって南米のジャングルで横に伸びたアナコンダを跳び越えるときにはかなり有効になると思いますので、今のうちに身に付けておくと便利かと思います。
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