なわとびって当たり前に、簡単にやってしまう子っていますね。
それに比べてやってもやっても、教えても教えてもなかなかできない子もいますよね。
実はあんな単純そうななわとびにも複雑に絡み合った複数の動作があるんです。
それのせいでなわとびを困難と思ってしまう子も少なくないんです。
今回はなわとびに隠されたメカニズムと跳ぶためのコツについて考えて行きたいと思います。
「なんでこの子はなわとびが全然できないんだろう」と思う先生や親にとっては「そういうことだったんだ」と思えるかもしれません。
1 なわとびの隠されたメカニズム
なわとびは単純な動作に見えて二つの運動が組み合わさっています。
① 跳ぶという動作
② 手の回旋という動作
この二つです。
「???・・・そんなの当たり前じゃない?縄を回しながら跳ぶってことでしょ?」
そうなんです。
縄跳びは「跳ぶ+縄を回す」という動作が組み合わさっています。
実はこれは協応動作といって「○○をしながら○○する」という動作のことを指しています。
右手で四角を描きながら、左手で○を描く。
右手でお箸を持ちながら、左手でお茶碗を持つ。
これらは左右の手で違う動きをしていますね。
これも協応動作の一つです。
「そんなの簡単にできるよ」
と聞こえそうですが、左右の手でやる協応動作の複雑なものの有名どころとしては「ピアノ」です。
左手で和音を弾いて、右手で主旋律を弾く。
しかも足を使ってペダルを踏む。
目は楽譜を見る。
左右の手どころではありません。
でも、こんな複雑な協応動作を難なくこなすピアニストはたくさんいますし、有名なピアニストしかそれができないかというとそうではありません。
小学生でも幼稚園生でもペダルを使う曲を楽譜を見ながら弾くことはあります。
でも、できない子もいます。
それと同じなんです、なわとびも。
「縄を回しながら跳ぶ」という協応動作が複雑だと感じてしまう子にとっては困難極まりないのです。
「じゃあ、そういう子はずっとできないのか?」
というとそうではありません。
右手でお箸を持って、左手でお茶碗を持てるようになるように、できるようになるのです。
2 易から難へ
なわとびに限らず、体育全般的にそうですし、体育だけに限らず学びすべてに言えることですがやはり「易」から「難」へとステップアップしていった方が技能は習得しやすいです。
中にはバスケットの初心者なのに、いきなり強豪校の部活動に入部し、レギュラーを勝ち取ったということもなくはない話かもしれませんが、大抵の場合は自分のレベルとかけ離れていると心が折れてしまいます。
まして自分で「やる!」と決めた部活動ならまだしも、体育の授業でやらされるなわとびが難しかったらやる気をなくすことは目に見えています。
だから「易」から「難」へとステップアップし、しかも「易」の中でもスモールステップで進んでいくのが良いでしょう。
できることから自信をもたせていって、ほんのちょっと変化させてレベルアップしていくというのが教育の鉄則です。
3 まえ跳びスモールステップ
なわとびが困難な子は、第一関門としてまえ跳びです。
でも、いつかできるようになる目標がなわとびのまえ跳びでは目標値が低いと思います。
目標として無難なのが二重跳びです。
それが結果的にできなくても、できるように頑張ることは大切なことです。
なわとびの三重跳び以降の技はできる子とできない子に差は出てきてしまいますが、二重跳びまでであれば練習次第で誰でもできるようになっておかしくない技です。
それではまえ跳びのスモールステップ指導を見て行きましょう
・小さく上にジャンプ
・床から1cmの高さでジャンプ
・つま先でジャンプ
・線をまたいでジャンプ
・笛に合わせてジャンプ
どうでしょうか、ただジャンプするだけでも様々なスモールステップのジャンプがあります。
これはなわとびが得意な子でも確認の意味で一緒にやってもいいと思います。
見てみると、どれもすぐにできそうじゃないですか?
縄を持たずにやるのですから、比較的簡単にこなしてしまうと思います。
できたときには声をかけましょう。
でも「すごい!」「天才だね!」という褒め方はあまりよくありません。
具体的にどこが良いのかを褒めてあげましょう。
褒め方叱り方については
を参考にしてみてください。
よくなわとびをしていて肩からぐるんぐるん回す子がいますが、あれでは上手にはなりません。
跳んで跳べないことはありませんが、回数をこなすことができないので、今回は手首や肘を使って回す方法を学びましょう。
・横回し
・前で回す
・頭の上で回す
・横回し(帽子で脇を締めて)
・八の字
この帽子で脇を締めるというのがなわとび技能としては重要だと思います。
回し方がなわとびの難関ポイントの一つです。
「肩から回さない」という声かけではなく、肩を回せない状況にすることが大切なのです。
言葉で伝わらないものは見た目や感覚で伝えましょう。
だから口で説明するより、見本として見せた方ができるという場面は体育ではよくあることです。
・足の裏全体で跳ぶ
・つま先だけで跳ぶ
・高く跳ぶ
・少し跳ぶ
これらを繰り返していくと跳びやすい跳び方が見えてきます。
つま先で少し跳ぶことです。
でもここまででかなりの技能が身に付いています。
・片手で縄をもって回すと跳ぶを組み合わせる(引っかからない)
・両手に縄を持って(2本の縄)回すと跳ぶを組み合わせる(引っかからない)
・縄をもって回すと跳ぶを組み合わせる
この協応動作が身に付くとまえ跳びはできるようになります。
4 まとめ
なわとびは単純な動作に見えて実は複雑な動作でした。
「○○しながら○○をする」という協応動作と呼ばれるものです。
二つの違った動作を組み合わせている複雑な動きだからなわとびは跳べる子と跳べない子がいるのです。
右手と左手で違った動かし方をするピアノが弾ける子と弾けない子がいるのと同じような感覚です。
苦手な子にとってはまずはスモールステップでどちらかの動きを自動化させてあげましょう。
「跳ぶ」という動き「手で回す」という動きをそれぞれ身に付けましょう。
スモールステップ指導は以下の通りです。
① ジャンプをする(縄を持たない)
・大きく上にジャンプ
・小さく上にジャンプ
・床から1cmの高さでジャンプ
・つま先でジャンプ
・線をまたいでジャンプ
・笛に合わせてジャンプ
② 縄を回す(跳ばない)
・横回し
・前で回す
・頭の上で回す
・横回し(帽子で脇を締めて)
・八の字
③ 同じリズム(縄を回さない)
・足の裏全体で跳ぶ
・つま先だけで跳ぶ
・高く跳ぶ
・少し跳ぶ
④ 回すと跳ぶの組合せ
・片手で縄をもって回すと跳ぶを組み合わせる(引っかからない)
・両手に縄を持って(2本の縄)回すと跳ぶを組み合わせる(引っかからない)
・縄をもって回すと跳ぶを組み合わせる
「易」から「難」へのスモールステップはできない子をできるようにする基本です。
小さなできるを繰り返して、自信をつけさせてあげながら技の完成に近づけていってあげましょう。
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