「一流選手は指導者にはむいていない」
どこかでそんな言葉を聞いたことはありませんか？
それって本当なのでしょうか？
最近のプロスポーツを見ていると、かつてそのスポーツで大活躍だった選手が監督として指揮をとっているというパターンもあります。
タイムリーな話ではプロ野球日本ハムの監督について新庄さんの名前が浮上しています。
そのような一流選手は指導者としては向いていないのでしょうか？
結論から言うと、半分は正解で半分は不正解です。
その理由は、一流選手だった人でも一流の指導者はいるし、名もない選手だったとしても指導に向いていない人もいるからです。
今回は、本当に一流選手は一流の指導者になれないのかについて解説していきたいと思います。

自分が監督、コーチ、教員のどれかの立場だったとします。
教わる側は選手や子ども。
今回は教育現場に向けてすべて「子ども」ということで書かせていただきます。
立場によって選手等に置き換えてご覧ください。

１　教わる側は知らないから教わっている

子どもが学校に来るのはたくさんのことを学ぶためです。
学習、生活、コミュニケーション、規則、集団生活、給食・・・さまざまな理由があります。
そして基本的に子どもたちは知らないことを教わりに学校に来ています。
授業をしていると
「あぁ、それ、塾で教わった！」
などと子どもは言うのかもしれませんが、それは一部の子です。
ほとんどの子は教わることに対して、はじめましての体験です。
でも教員はそれが当たり前過ぎて、気づかずにいます。
教科書に載っている勉強なら知らない前提で教えることができます。
「今まで教科書で出たことがないから知らない、だから教えよう！」
と思えます。
例えば、け算九九を教わったことがない子どもに対して
「どうして九九が言えないんだ？」
とは言わないでしょう。
それは教えていないことが明確だからです。
でも、椅子にちゃんと座っていられない子に対して
「どうしてちゃんと椅子に座っていられないんだ」
と怒りませんか？
それ、実は子どもはちゃんとした椅子の座り方を知らないんです。
教わったことがないんです。
「そんなの家で教わってくることだし、幼稚園で教えてくれるはず。そもそも椅子の座り方なんて教えることじゃない！」
という意見が聞こえてきそうです。
確かにそうかもしれません。
「椅子の座り方なんて誰にも教えてもらわなくても座れて当然、見て覚えるものなんだから教えなくてもいい！」
しかし、実はその考え方に落とし穴が潜んでいます。
「知っているのが当然」「わかっていて当然」という考え方が教えるという作業を邪魔してしまいます。
子どもは「知らなくて当然」「わからなくて当然」と思わなければいけません。

よく「いじめはよくないよ！」と言います。
それはおそらく世界中の老若男女すべてが知っています。
もちろん子どもも例外ではありません。
でも、それがどうしていけないのか、いじめをするとどうなるのか、なにがいけないのか、結局自分は何をしたらいいのか。
それは知りません。
根本的な部分や理由を知らないのです。
だから子どもには、ちゃんとした知識と活用方法を教えなければいけません。
「そんな当たり前のことは子どもは知っている」
と思っていると、本当に教えなければいけないことを見失い、教えることができなくなります。
指導者は、相手がなにを欲しているのか、理解してもらうためにはどうしたらいいのか、それを考え伝えることが仕事です。
「知ってるでしょ？ちゃんとやって！」
これはコーチングでも教育でもありません。
単なる怠慢です。
子どもは知らないからできないということを理解してあげましょう。

２　教わったからと言ってできない

「よし！それならもう教えた！だからきっとできるはず！」
実はここにも落とし穴があります。
子どもは教わったからと言ってすぐにできるようになるものではありません。
例えば、とび箱運動の開脚跳びを例にしてみましょう。
ちゃんとした理論を伝えて、頭に入れさせます。
いざやってみると・・・できない。
こんなことってよくあることだと思いませんか？
知識として得たものが技能として身についているとは限らないのです。

先に出したかけ算九九も、教えたからと言ってすぐにできるようになるとは限りません。
家庭学習として宿題で出して、何度も何度も練習してやっとできるようになるものです。
それを１回教えたからと言ってすぐにできるようになるとは限らないのです。
何回もやってみて、やっと覚えるものです。
かけ算の場合は”将来必要感”がすごいので指導者も必死に教えます。
でも椅子に座れないのは「座って当たり前、教えることではない」という考えにより”将来必要感”がすごいのに見落としてしまうのです。
だから子どもがやる意義を見出すまでは教えましょう。
教えてもできなかったらどうするの？
それについては次で解説します。

３　教えても教えてもできない

先に説明したように子どもは教えてもすぐにできるようになるとは限りません。
できなければまた教えるしかないんです。
１回教えてできるようになる子は、そもそも指導者に聞いてきません。
教えてもできない子に対して
「どうしてできないんだ？」
「教えたのに！」
と言っていませんか？
指導者が教えても理解が遅いのでしたら、教え方を変えましょう。
「そんなのきれいごとで、教わる方ができないのが悪い！」
という意見も聞こえてきそうです。
そうなのかもしれません。
でも、どれだけそんなことを言ったとしても子どもができていないという事実は全く変わりません。
教わる側のモチベーションがただ単に下がるだけです。
もしもお金を払って入っている学習塾だったとします。
その塾生が、何度言ってもできないとします。
だから
「何度も教えたのにどうしてできないいんだ！」
と言われてしまえば、その塾をやめて自分を伸ばしてくれるところに行くだけです。
そしてその新しい塾で、結局できるようになったとしたら？
教える側は、どうしたらできるのだろうとあの手この手を考えて、提供することが本当の仕事です。
1人1人にあった指導プランを立てなければいけないのです。
毎日を激動に過ごしている教員だったら、そんな作業が大変なのはもちろんわかっています。
しかし「できない」という事実を放置したり先延ばしにしたりしては解決には繋がりません。

４　人のせいにしない

子どもが教えたのにできない理由を誰かのせいにしていませんか？
「前の指導者が教えなかったんだ、幼稚園で教わってきているはずだ」
確かに前の指導者が教えたかもしれません。
でも子どもは今できていません。
だからってできないことに対して怒っても解決にはなりません。
できないことを前の指導者のせいにしても解決にはなりません。
何度も言いますが、子どもは教わっていないからできない。
もしくは、教わったけど定着させてもらっていないからできない。
誰かのせいにする前に教えてあげましょう。
定着させてあげましょう。

５　結局一流選手は一流指導者になれるのなれないの？

上記の１～４をクリアできていれば指導者としても成功します。
一流選手だった人で、自分の感覚でものごとを考えてしまえば指導できません。
つまり一流選手の中にはエリート過ぎて特に教わることをせずにできてしまった方がいるからです。
だから「できない」ということを理解してあげることができないのです。
「自分だったらできたのに、できない理由がわからない！」
こういう考え方をもってしまうことが一流選手に多いから、指導者として成功していないように見えるのかもしれません。
一流だろうが三流だろうが、わからない子どもや選手に寄り添って、どうしたらできるようになるのかを考え、プランを立てて、できるようにしてあげられれば指導者としても成功と言えるでしょう。

６　まとめ

一流選手でもなんでも選手に寄り添って教えることが大事

以上が、指導者についての話です。
相手の気持ちを考えるって指導以外でもとても重要だと思います。
自分がそんな指導者に当たりたくなければ、自分はそんな指導者にならないということを心がけるといいのかもしれません。
教えても教えてもなかなか覚えないのはアンパンマンです。
「バイキンマンは水を使って顔に水をかけてくるよ！」
「バイキンマンはかびるんるんを使って顔を汚してくるよ！」
と何度も言っているのですが、なかなか覚えてくれません。
だからこそ繰り返し教えることが大切なのです。