1 スキーマ理論
これは何という動物でしょうか?・・・と、聞かれてきっと「犬」と即座に思い浮かんだでしょう。
ではこれは何という動物でしょうか?・・・と、聞かれてもきっと「犬」と答える方は多いでしょう。この写真を初めて見た方は、この動物をどうして「犬」と思うことができたのでしょうか?
それはシュミットのスキーマ理論という考え方に基づいています。わたしたちが物事を理解したり記憶したりするときの枠組みとなる抽象的で一般的なルール、それがスキーマです。
なぜ写真を見て「犬」ということがわかったかというと、「犬という動物」に共通する一般的で抽象的なルールを持っているからだと考えられます。
犬の顔つき?
足の様子?
舌を出した様子?
もしもこのようなスキーマ理論をもっていないと、すべての犬の種類を把握していないと「これは犬だ」ということを判断することが困難になります。
2 運動場面でのスキーマの利用
これは運動場面でも同じ考え方が適応可能となります。テニスを例にあげてみましょう。
飛んでくるボールやコース、速さや球質、自分のポジション、さらには打とうとするボールのコースや速さや球質、風やサーフェースの状態は1球1球異なっていて、何年テニスをしていても厳密にまったく同じ球を打つということは、ほとんどないと言っていいと思います。
もしもスキーマという考え方がない場合、すべての球を打ち返すにはほとんど無限に近い知覚と記憶を貯蔵していなければいけないことになります。
ですが、このような考え方には無理があります。そのためスキーマ理論という考え方が活きてきます。
3 スキーマの形成
グラウンドに大きく自分の名前を足で書くという運動はできるでしょうか?おそらく経験したことがないという方は大多数だと思いますが、ほとんどの人がこの運動を実施できると思います。これまでにやったことがあるのは手と指の筋群を使って小さく名前を書くという運動で、足の筋群を使ったような大きな運動ではないと思います。過去い経験した目標とする運動によってつくられた、知覚と記憶によって運動が行われると、スキーマが形成されていきます。この考え方を用いれば、一つ一つの運動について基準をもつ必要がなくなるとともに、行ったことのない新しい、はじめての運動に対しても適応が可能になります。だから子どもを含め、大人までよりたくさんの運動経験をさせたりしたりすることが大切なのだと考えています。
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4 同じ動きの運動と変化のある運動
スキーマの考え方を用いれば、一つ一つの運動についての基準をもつ必要がなくなり、行ったことのない新しい、はじめての運動に対しても適応が可能になります。
例えばボールを投げるときにも、「ソフトボール」「カラーボール」「玉入れの球」「紙を丸めた玉」で、投げる経験をさせたり、同じ長さばかりでなく「5m」「10m」「15m」「20m」と距離に変化を持たせることで、野球のピッチャーマウンドからキャッチャーまでの18.44mをうまく実行することができると考えられます。
5 まとめ
スキーマとは共通する一般的で抽象的なルールであり、初めて見る「犬」だったとしても犬であることの一般的・抽象的なルールから判断している。
テニスのようなオープンスキルも、1試合に全く同じ球はほとんど来ないのに打ち返せるのはスキーマという考え方をもっているから。
スキーマ理論をうまく活用することで、多くの運動場面で活用することができる。
そのためには、たくさんの経験をして一般的で抽象的なルールを自分の中に取り入れる必要がある。また、同じ動きだけの練習を繰り返すのではなく、ボールの種類を変えて大きさや重さに違いを出したり、ボールを飛ばす距離に違いを出したりした練習に取り組んでいるとスキルの向上だけでなく、新たなスキーマの獲得にも繋がっていくと考えられる。
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