体育で鉄棒をやると子ども達がどうしても困難と感じてしまう技があります。
それは前方支持回転です。
前方支持回転は、鉄棒に乗って支持した状態から、その姿勢で前に1回転して、また支持の姿勢に戻る技です。
空中前回りとも言われる技で、子ども達は難しいと感じる技の一つです。
この技の指導はとても難しいので、今回は技の解説をしたいと思います。
1 前方支持回転、なぜ難しい
私が感じる前方支持回転の一番の難しさは「勢いでできる技ではない」ということです。
たとえば、子ども達が最初に立ち向かう困難技として逆上がりが考えられますが、もちろんコツや手段はあるのですが、助走という勢いを使うことができるのです。
後方支持回転に関しても、大きな振り上げをして勢いを利用して回ることができるのがとても大きいです。
一方で前方支持回転は、事前にいくら勢いをつけたとしても回転に利用することはほぼありません。
そのため、回転前半、回転中、回転後半に必要なコツをすべてコンマ何秒の中で上手につなげなければなりません。
少しでもずれると成功できないということに、前方支持回転の困難さがあります。
2 前方支持回転の断面的な指導
体育の技というのは、いかに断面的に見ることができるかということに指導と技能習得の鍵が隠されています。
すべて一つの技として見てしまうから、うまく指導ができないのです。
前方支持回転を断面的にみると3つの場面に区切られます。
② 回転後半
です。
それぞれのコツを上手に一つにつなげられれば、前方支持回転を攻略することができます。
3 場面解説Ⅰ「回転前半・回転中」
前方支持回転の開始で勘違いされがちなのが、先に書いたような「勢いを必要とする」と思われているところです。
後方支持回転では、大きく脚を振り上げて回転に入りますので、その印象が強いのかもしれません。
ですが、前方支持回転は振ったところでそれを使う場面がないし、むしろこれから回転をする邪魔となってしまいます。
だから、まず指導のときに教えるべきは「脚を振り上げない」ということを意識させましょう。
次に鉄棒に乗ったときの姿勢です。
肘をしっかり伸ばし、胸を張って、鉄棒から頭が一番遠い位置にあるようにしましょう。
回るときにはこの姿勢のまま前へと倒れていきます。
膝を曲げて、太ももの付け根と手のひらで鉄棒を挟みます。
怖いからといって背筋を丸めてしまうともう回ることはできません。
回転半径を大きくして遠心力をもらいます。
また、顎が上がってしまうと遠心力が弱くなって回りにくくなります。
4 場面解説Ⅱ「回転中」
前方支持回転の前半は、頭を鉄棒から遠くにして、遠心力をもらい、肘や背筋を伸ばした姿勢を保って倒れていくような感じでした。
回転後半は、頭が鉄棒の真下を過ぎたところから、体をたたむようにして、丸めます。
身体を起そうとするイメージです。
前半部分で頭を遠くにしていると良いのは、遠くから急激に内側に入るので、近道をしているイメージとなります。
後半も頭を遠くにしようとすると起き上がることはできません。
回転前半の動きから中盤、後半を上手につなげることが、前方支持回転の成功へとつながります。
5 習得のための練習法
回転力を生み出すために、前回り下りを練習させましょう。
何度も何度も下りることを繰り返すと、着地した足が、だんだんと場所を変えていくことに気づくはずです。
最初は鉄棒の前、次に鉄棒の下、最後に鉄棒の手前。
このように成功へと近づくと着地位置が変わってきます。
また、そのようになるように子どもには声掛けをしましょう。
逆に頭で理解していなくても、できる場合があるというのが体育です。
そこをちゃんと評価してあげることが子どもの体育嫌いをなくすことができます。
頭で理解できているもの(思考力)を、できるようにする(技能)ことを大切にしてあげましょう。
よく鉄棒は、手にまめができてしまう種目ですが、豆なくして技能習得はあり得ません。
ですので、単元を一時期に固めるのではなく、時期をおいてできるようにしましょう。
6 まとめ
それは勢いを使って回ることができないから。
① 回転前半~中盤では、肘と背筋を伸ばして倒れこんで回る。
このときに頭が鉄棒から一番遠い場所を回るようにする。
② 回転後半では、遠くで回っていた頭を一気に起き上がらせて近道させる。
練習では、前回り下りを繰り返しして、着地位置を鉄棒手前にできるようにする。
鉄棒の技能習得は、手にまめを作らずには身に付かないことを子ども達にも理解させ、単元を2部構成にして時期を開いて行う。
1人でも多くの子が、前方支持回転をできるようにして、鉄棒に対して自信をもってほしいと思います。
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