「ボールの投げ方なんて教わったことなかったなぁ」
という話・・・大人からよく聞きませんか?
「1年間ってこんなに早かったっけ?」と同じくらい大人の口からはよく聞きます。
でも実際、昔ってボールの投げ方を教わったわけでもないような気がします。昔の子どもたちはどうやってそれら技能を勝ち取っていたのでしょうか?
投げるという運動は、遊びの中から勝ち取ってきていました。
では、今の子は?なにで勝ち取っているの?
それは「遊び」そのものが以前とは変わってきているので遊びの中からは獲得しにくい時代になってしまっています。
今は体を動かすのではなく指を動かす時代なのかもしれません。
携帯ゲーム機やスマホなどの発達により、子どもたちはより体を動かさなくなっています。
もちろん動かしている子はたくさんいます。
でも動かさない子は全然動かさない・・・。
その二極化と言われています。
さて、今の大人はすべての人が上手にボールが投げられるか?!と言えばそうではないと思います。
やはり、子どもの頃に投げる経験をたくさんしている人が上手に投げられるはずです。
小さい頃から遊びでまったく投げたことがない人はいくら大人でも投げられません。
大人なので、子どもよりは理解や思考が高いので、見ただけで真似できるということは十分に考えられますが。
とにもかくにも、大人も子どもも投げ方を早く身に付けるためにはコツをつかむ必要があります。
今回はそのコツを解説したいと思います。
2 投げる前に
ボールを投げると言っても大きなボール(ドッジボールをしたい)や小さなボール(野球をしたい)では、ボールの握り方(持ち方)が変わってきます。
また、力の伝え方も変わってきます。まずはその握り方と力の伝え方から解説します。
大きなボールの握り方(持ち方)と力の伝え方
大きなボールでは、握る事はできません。
ですので手を大きく開いてボールを手のひらに乗せるイメージとなります。
大きなボールの場合はドッジボールをするときが多いでしょうか。
ですので、どちらかと言うと指先でコントロールするというよりかは、手のひらで押さえていて手首で投げるようにします。
そのため、手のひらをボールにしっかり接触させましょう。
小さなボールの握り方と力の伝え方
小さなボールの方が、握るイメージがわきやすいでしょうか。
野球選手をみてみると人差し指、中指、親指の3本の指で握っているのを目にしませんか?
小さなボールは指先3本で握りましょう。
そして力は人差し指と中指の先でボールに伝えます。
その2本が最後にボールから離れるようなイメージで投げるようにしましょう。
「小さなボールって新体力テストのソフトボール投げも小さなボール?」
と聞かれることはよくあります。
これは何とも言えない解答になります。
大人ならば3本の指で持ちたいところですが、指導するのは子どもです。
子どもにとってソフトボールの1号球も大きいのです。
だから、持てれば3本、持てなければ5本と伝えましょう。
3 ボール投げを分解的に
投げの動作は腕を使いますが、遠くに飛ばすためには全身を使わなければいけません。
腕だけが上手にできてもボールに力を伝えることはできません。
一つ一つの動きを一連の流れにしてこそ上手なボールの投げ方となります。
私が投げ動作を分解的にするとしたら5つです。(右投げの場合)
① かまえ(両足重心)
② 足上げ(右足重心)
③ 振りかぶり(右足重心)
④ 投げ動作(重心移動)
⑤ リリース(左足重心)
これらの動きを繋げること、特に重心移動することが投げ動作の難しいところだと思います。
では、これらを身につけるためにどのようなことをしたら良いでしょうか。
運動技能を身につける際は、技能を分解的に切って動きを捉えるのが良いです。
① 分解的に切って、切った動作を一つ一つできるようにしてから繋げるという技能獲得方法
② 分解的に捉えるけれど一つの技能として最初から一連の流れで練習する技能獲得方法
があります。
今回は後者の技能獲得方法と言えます。
それでは、5つの動きを解説していきたいと思います。
4 具体的な練習法
① 紙でっぽうで投げ練習
断片的に捉えるけれど、投げ動作を一連の動きとして練習するためには「紙でっぽう」がとても有効です。
紙でっぽうの折り方は
紙でっぽうが準備できたら上記の
①かまえをします。
②足上げ動作をします。
※このとき左足をあげて右足にしっかり体重が乗るようにしましょう。
紙でっぽうを持っている肘も曲げましょう。
左足を前に一歩出して右手に持っている紙でっぽうを勢いよく振りおろします。
すると「パン!」と音がするでしょうか?
この音が出ると投げ動作がしっかりできたことになります。
もしも音が出ないときには振りおろしたときに肘が伸ばせていないのと、手首が返っていないという理由になります。
手首を最後にしっかり振ってあげると大きな音をさせることができます。
※紙でっぽうは、新聞紙のような薄めの大きな紙で作るのが良いと思います。
② 紙飛行機で投げ練習
紙飛行機を投げる方法は肩の使い方とリリースを習得するのにとても有効です。
遠くに飛ばしたいという思いもあるのである程度斜め上を意識しながらリリースすることができます。
紙でっぽうで身に付けた重心移動と手首の返しを、この紙飛行機で確認してみましょう。
③ 玉入れの球で鬼ごっこ
玉入れの球を投げ合う鬼ごっこをすると投げるという動作が身につきます。
どのような鬼ごっこかは、また次回解説したいと思います。
5 ボールを投げよう
ここまで身に付いたら実際にボールを投げてみましょう。
いきなり遠くへは飛ばすことはできませんし、むやみに遠くに飛ばそうとするとコントロールを失います。
まずは3mのところにラインを引いてそこまで飛ばしてみましょう。
丸を描いてその中に入れるという方法を使えばコントロールも同時に身に付きます。
ただ、遠投ではそこまでのコントロールは必要ではないので最初からコントロールの意識は必要ないかと思います。
3m飛ばせたら5m、5m飛ばせたら7mとだんだん距離を伸ばしていきましょう。
30m以上を目標にしてみましょう。
6 投げるための注意点
ここまで投げ方のコツをお伝えしてきましたが、そもそも投げるための筋力が備わっていなければ遠くへボールを飛ばすということはできません。
まずは自分がどれくらい飛ばす筋力を持っているのかを知ることも重要です。
そしてボールを遠くへ飛ばすというのは、バーベルをガンガン上げて身に付けるといういわゆるムキムキの筋肉(アウターマッスル)とは違います。
身体の深い場所に位置するインナーマッスルがボールの距離を伸ばしてくれます。
インナーマッスルの鍛え方はいろいろとありますが、まずは重たいものを持って身体をムキムキにするのではなく、たくさん投げて、投げる筋肉を身に付けてください。
投げる筋肉は投げる動作から!
7 まとめ
今回は、投げる動作を身につけるための動作を分解的にしてみて、具体的な練習方法を解説しました。投げる動作の分解的な見方は
① かまえ(両足重心)
② 足上げ(右足重心)
③ 振りかぶり(右足重心)
④ 投げ動作(重心移動)
⑤ リリース(左足重心)
となっています。
分解的に必要な部分をあげましたが、跳び箱の分解的指導と違うところは、分解で技能を見るけれど、投げるという動作は一連の流れで覚えた方が良いということです。
例えば足上げだけを練習してもスローイングの力は身につきません。
かまえて、足上げて、振りかぶって、投げ、リリースまでが投げる動作になります。
一連で覚えた方が良い技能もあるということです。
具体的な練習方法は
①紙でっぽう
②紙飛行機
③玉入れの球で鬼ごっこ
④実際にボールを投げる
投げるための注意点としては、バーベルなどをガンガンに上げてムキムキの筋肉を鍛えても遠くに跳んだり速球を投げたりすることはできません。
インナーマッスルと言われる、外側ではなく内側にある筋肉でボールは扱うのです。
だから鍛えるならばインナーマッスルです。以上が投げるについてです。
投げる力を身につけているといろいろなことに役立ちます。
日本人ならほぼやっているとひげダンスです。
あのサーベルに果物を突き刺すためには、子どものうちから投げるという技能を身につけていないとできないのです。
上手に投げられて初めてドリフターズに認めてもらえますので、できるだけ早くできた方が良いでしょう。
ただ、できないときにも救済があります。
それは匙を投げることです。
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